文芸酒場 双月亭

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ライキュームからの使者

「マラス……の調査ですか?」
「ええ、マラスに関する調査をまとめて頂きたいのです」

「ライキュームからの使者」と名乗るマーカス(Marcus)は、聞き返す私にそう答えた。

「しかし、マーカス殿。ライキュームにはソーサリアの叡智とも言うべき、優れた学者の方々がおられるではありませんか。何もウチのような市井の、それも酒場などにわざわざ依頼しなくとも、十分に調査研究は進んでいるのではないのでしょうか?」

私としては何故このような依頼を当店に持ち込んで来るのか、真意を図りかねた。そもそも私は学者ですらなく、ただの一般市民に過ぎない。私の研究などを学会で発表したりしたら、赤っ恥をかく事になるだろう。

「それが……実際の所、貴方が思っているように研究は進んでいないのです」

マーカスの表情に翳(かげ)が差した。

「確かにブリタニア本国については、貴方の言うように優れた研究結果や書物が数多く著されています。しかし、マラス大陸に関する研究はこれまでほとんどされていないのです。
ご存知のように一連の戦乱の中、ライキュームに納められた数多くの書物が灰燼へと帰しました。研究者達の大勢も姿を消し、今ではかつての知の殿堂も、がらんどうのようになっています。
マラスはまだまだ謎に包まれています。大地の下には星の海。危険の少ない土地かと思えば、ドゥームやラビリンスのような、恐ろしい迷宮もある。ブリタニア本土に比べあまりにも違いすぎるのに、これまであまりにも調査されて来なかったと思いませんか?」

確かにその通りだ。私自身も、公に著された書物は、ほとんど知らない。日ごろ住んでいても、いや、住んでいるからこそ、その不思議に気づかないものなのだろう。

「無論、専門に研究しているわけではない貴方に、学術的な論文を求めているわけではありません。街の人々の間に伝わる戯れ歌やおとぎ話、この地独特の表現や例え話など、そういう市井の声を集めて欲しいのです」

なるほど、そういう事か。それならば世慣れた人間の集まるウチのような酒場の方が、逆に適しているのかもしれない。事情がようやく飲み込めた。

「ご理解頂けたようですね。それでは私は戻ります。たくさんの調査結果が集まる事を期待していますよ」

マーカスは外に出ると、Recallの呪文を唱え、店を後にした。

「さて……どうしたものか。とりあえず、今日の営業で話してみるか」

私はまもなく迫る開店時間の準備を再開した。


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