文芸酒場 双月亭

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魔族への転生

先日、私は友人である真之介からの依頼により、ある1冊の朽ち果てた本を復元した。その書に書かれた内容によると、魔族への転生を果たす為にはその身にルーンを刻む必要があるらしい。

Rune Curving Knife

古代より伝説に語られていたエルフ族がこの大地に帰還した頃に、彼らよりもたらされた技術によって新たに産み出された、魔力を帯びた短剣。この短剣を作成する為には、Dread Hornと呼称されている、邪なる力によって堕した一角獣の頭部が必要だ。禍つき力によって身も心も歪んだ一角獣は、正しき心を喪った代償に、それまでとは比較にならない力を得ている。こうなっては乗りかかった船だ。私はこの危険な探索にも協力する事にした。

とはいえ、私は日常を書斎や自らの酒場で過ごす身だ。あの危険地帯に関する知識は書物を通じて知っていても、実際に赴く事はこれまでなかった。机上の学問だけでかの敵を討伐できると思うまでは、さすがに私の知能は愚かではない。

「戦場働きの経験が豊富な者を雇うべきだ。君が働いている酒場は、その為の店なんだろう?」

私は真之介に提案し、彼もそれに納得したので、我々はHigh Jinksで人を集める事にした。


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しばらくすると、何人かが協力してくれる事になった。その中でもバイロンは、常に戦場を駆け回っているだけでなく、聡明な知性と豊富な知識、数多の戦場での経験を有する、卓越した人物である。集まった者達からの信頼も厚く、誰がともなく彼をリーダーとして推し、彼の指揮の下で件の魔境へと向かう事となった。

戦場では熾烈を極めた。
Dread Hornがいる小島へたどり着く為には祭壇で儀式を執り行わねばならないのだが、儀式に必要な生贄が恐るべき魔物共の肉体ときているのだから、たまらない。致死性の毒を持つ大蜘蛛や、恐るべき魔力を持った蝶が、自らの領域を荒らした我々を容赦なく打ちのめす。
特に蝶は、我々の仲間に姿を擬し、元の主を殺して成り代わろうとする、恐るべき魔物だ。以前に私はそのような魔物がいる事を知人の冒険者に聞いており、その時の話を元にある一冊の本を書いている。魔物への知識はある程度有しており、これだけの精鋭がいれば何とかなるだろうと見込んでいた。


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しかし、それはただの幻想に過ぎなかった。自らの存在意義を否定されるという恐怖を、しょせんは理解しきれていなかったのだ。
実戦とは、実際の戦場とは、かくも恐ろしいものなのだ。戦場という人間、いや、生物としての根源である生存闘争の前では、机上の学問など一片の肉の欠片ほどの価値もないのだと、私は痛感した。
共に来た仲間が地面に伏し、彼らを治癒の魔法で癒そうとしている私の目の前に、「私」が現われた。ああ、彼は私に成り代わろうとしているのだ。そして次の瞬間、私の身は「私」の炎の魔法によって、焼かれ―――
気を失った。

真之介の気付で目を覚ました私が見たものは、必要な品物を集め終わり、祭壇で儀式を執り行っていたバイロンの姿だった。どうやらまもなく本命のDread Hornとのご対面のようだ。
バイロンが儀式の最後の言葉を唱え終わると、私の体は突然転移した。そう、「彼」がいる小島へである。

我々の前に姿を現したDread Hornへバイロンの号令以下、戦士達が白刃を翻して向かっていく。暴れ馬の如き、という表現が的確なのかどうか、私には分かりかねるが、ともかく禍つき力を以って屈強な戦士でさえも一撃で葬るような攻撃を加えている。彼らも必死に戦っている。かの如き事態になれば、いくばくかの魔術の心得のある私は、全力で彼らを治癒する事に専念する。というより、下手に魔法で攻撃を加えれば、怒りに震えるDread Hornは攻撃を加えた者に向かっている。だから、絶対に手を出すなと、事前にバイロンに言われた事を守っていたのだ。

かつて魔法をはじめて習った時に、師に言われた言葉を思い出す。

「魔術師の戦いとは何か。
敵を倒す事?それならば、戦士に任せればいい。
仲間を癒す事?それならば、衛生士に任せればいい。
敵の動きを封じる事?それならば、吟遊詩人に任せればいい。

魔術師の戦いとは、『今、そして未来に何が出来るかを考え、それを実行する事』なのだ。それが出来ない魔術師は、ただの市民と何も変わらない。言い換えれば、魔術師の敵とは、己自身なのだ」

今の私が為すべき事は、次々に傷付く仲間の様子を見定め、的確に回復する。一瞬の判断ミスが戦線離脱を招き、引いては前線の崩壊を招く。それを防ぐ手助けをするのが、今の私の戦いなのだ。


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一体、どれくらいの時が流れただろうか。仲間の剣がDread Hornの急所を貫き、大地に身を伏した。我々は目的のDread Hornの首を切り落とし、この領域から脱出した。


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High Jinksに戻り、儀式が執り行われたのを見届けた後に、私はバイロンに今日の指揮の礼と的確に支援できなかった事をわびた。

「気にするな。魔術師の仕事は、目の前だけの事だけでなく戦場全体を見渡し、2分後の戦場がどうなっているかを考える事だ。今は出来なくとも、いつかはできるようになるさ」
「ええ、そのように努力します」

私は普段の言葉遣いとは異なる、師に対する口調で彼に答えた。


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こちらは5月に出雲シャードの酒場High Jinksさんで行われたロールプレイ(以下、RP)イベントを基に創作したSSです。若干セリフなどは改変しておりますが、登場人物や事実関係などはすべて実際にあった話です。自らや他のプレイヤーの方を軸として物語を紡いでいくというRPは、これ以外にもたくさんの酒場やコミュニティで取り入れられています。当店とも関わりのある方々や酒場の方もいらっしゃいますので、興味を持たれた方にはご紹介しますよ。


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